表面保護/ダイシングテープ

1.微細化、薄ウェーハ化により多機能化するテープ

 半導体製造において使用される接着テープとしては、バックグラインディング(BG)時の裏面保護用テープ(以下、BG用テープ)とダイシング時に使用されるダイシングテープがある。ダイシングテープは、ウェーハ裏面に貼り、ウェーハを保護・固定し、ピックアップ工程まで保持するためのテープである。
 両テープとも、ウェーハとテープとの剥離に際してUV照射を行うUV型とUV照射を行わないnon-UV型が提供されている。UV型は高い粘着力を持ち、安定したウェーハ固定を実現する一方、UV照射によって粘着力を下げることで、剥離が容易になるという特徴がある。この特徴から広く採用されているが、UV照射のための設備が必要となるためnon-UV型よりもコストが高くなる。また、UV照射のプロセス時間がかかる。このような点を避けるため、nonUV型を利用するユーザもいる。
 ダイシングテープ、BGテープには、高い粘着性とウェーハ固持力、処理後の剥離のしやすさなどが求めら、基材、接着剤などの開発が進められている。このほか、ダイシングテープに関しては、チップの欠けを防止する「耐チッピング性」、ウェーハ、チップの薄型化に対応した「高ピックアップ性」、ウェーハ裏面への金属汚染や粘着剤の移行による汚染を抑えた「低汚染性」などの改良が進められている。
 BG用テープでは、ウェーハの表面構造に沿って確実に保護するための「ウェーハへの追従性」、研削水、研削屑などの侵入によるウェーハ表面の「汚染防止」、テープ貼付時の残留応力に起因するバックグラインド後のウェ-ハの反りを抑制するための「応力緩和性の付与」、バンプの凹凸によるバックグラインド時の「応力分散」などの高性能化が求められている。
 さらにダイシング、BGというプロセスだけでなく、その後のプロセスでも利用できるようにするため、テープの多機能化が進められている。
 ダイシングテープでは、ダイシングテープ本来の機能に、ダイボンディングで必要となるダイとリードフレーム、基板を接着させるダイアタッチ機能を組み合わせたテープが製品化されている。
 さらに、極薄ウェーハについて、ウェーハの仮固定に加え、溶剤での直接洗浄を可能にする溶剤耐性を備えたダイシングテープの開発が進んでいる。
 BGテープでは、研削後にテープを貼り付けたまま、熱処理プロセスに使用できる耐熱性テープの開発が求められている。

2.2019年は大幅減、20年後半から回復加速

 ダイシングテープ、BGテープからなる半導体製造用テープの市場は2018年には1,063億6,600万円となった。しかし、2019年は半導体市況の停滞に伴う需要減に加えて、競争激化による価格低下が加わり、前年比33%減の660億円にまで低下したものと推定される。
 2020年については、半導体需要の回復に伴い、半導体製造向けテープ市場も成長した。しかし、回復が年後半からであったことから、成長率は9.5%、市場規模は725億400万円に止まった。
 2021年に関しては、半導体市場が前年比20.7%増という大幅な成長が予想されている。特にメモリ(前年比31.%増)が大きく成長することが見込まれているが、実装の積層化が進むメモリでは、BG用テープ、ダイシングテープにおいて高機能化が望まれており、価格も安定してきている。このため、2021年のテープ市場は、前年比18.3%増の858億円にまで拡大するものと予想される。
 半導体製造向けテープ市場には、国内外の多くの企業が参入している。リンテック日東電工という国内大手2社で、世界市場の60~70%を占めているものと推定される。両社以外にも、日本の大手化学メーカがいくつも参入、市場の大半を日本企業が占めている。

3.リンテック、日東電工が市場をリード

 リンテック日東電工のほか、古河電気工業(古河電工)昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)三井化学東セロ積水化学工業住友ベークライトデンカマクセルなどが参入しており、下記のように取り組んでいる。
1)リンテックの半導体製造用テープを中心とするアドバンスマテリアルズ事業部門の売上は2019年には前年比41.7%減となったが、2020年度には同16.0%増に回復している。旺盛なテープ需要に対応するため、生産能力の強化を進めており、2019年度以降、主力工場である吾妻工場にテープ向けの最新鋭精密粘着塗工設備の導入を続けている。
 同社では半導体製造向けテープを「Adwill」ブランドで事業を展開しており、ダイシングテープ(UV硬化型/nonUV型)、BG用表面保護テープ(UV硬化型/nonUV型)に加えて、ダイシングテープとダイボンディング剤の機能を合わせ持つAdwill LEテープを製品化している。
 ダイシングテープでは、2020年度にはRoHS2対応の製品群を開発した。
2)日東電工はBG用テープ、ダイシング用テープを「エレップホルダー」というブランドで事業展開、BG用、ダイシング用ともUV硬化型とのnon-UV型を製品化している。
 同社でもダイシングテープ(感圧)型とダイボンディング接着剤の機能を組み合わせた「エレップマウント」を製品化している。同製品は40℃でのウェーハマウントが可能となっている。
 開発面では、テープを貼り付けたまま、BG後の熱処理プロセスに使用できる耐熱性BGテープ、テープを貼った状態でのウェーハ洗浄を可能にするように各種有機溶剤に対する耐性を持たせたダイシングテープ、などの開発に力を入れている。
 同社も積極的に生産能力の増強をすすめており、半導体製造用テープの製造拠点である豊橋工場に対しては2019年度から2022年度までで約195億円の設備投資を計画している。
3)古河電気工業(古河電工)も、BG用テープ(UV型/nonUV型)、ダイシングテープ(UV型/nonUV型)に加えて、ダイシングテープとダイアタッチ機能を組み合わせたテープを製品化した。この製品はステルスダイシングにも対応している。
4)昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)のダイシングテープは、粘着タイプの接着剤を使用し、剥離時にUV照射などの処理が不要となる。また、粘着力のグレードが豊富であり、各種ダイシング方法に適したテープを選択することができる。
 また、ダイシングテープとダイボンディングフィルムの機能を併せ持つ一体型フィルムも製品化している。同製品は低温でのウェーハ裏面貼付けに対応する。さらに、同製品を使うことで、ダイボンド後に熱硬化することなくワイヤボンドが可能となる。
5)三井化学東セロはBG用テープ「ICROS」が中心。基材フィルム、粘着剤を自社で設計から製造まで最適化することで、低汚染、テープ厚みの高精度管理を実現した。これにより高精度の高さ制御が要求されるハイバンプ構造などにも対応を可能にするなど、ハイエンド向けの製品に力を入れている。
6)積水化学工業のSELFAシリーズは、BG用テープとしての使用が中心。そのほかにも、各種パッケージ製造プロセスにおけるリフローなど熱工程時のデバイス保護、めっき工程時の裏面保護などに使用されている。さらに150℃までの環境下で部品の仮固定ができ、UV照射後剥離が可能な製品も発表している。
7)住友ベークライトは、UV型ダイシングテープとしてスミライトFSLを製品化、尼崎工場で製造している。高い耐チッピング性が特長である。 
8)デンカはBG用テープとして「エレグリップテープ」を製品化している。同製品は非水溶性タイプであり、水回りに強く、洗浄する必要がないという特長がある。また、回路面などの凹凸に対する優れた密着性を実現している。
9)マクセルではダイシングテープ、BG用テープとしてスリオンテックを製品化している。同製品は、高固定力タイプ・易ピックアップタイプなど使用条件に応じた対応が可能となっている。
 特にダイシングテープとしての使用実績が大きく、中国市場では25%以上のシェアを獲得していると発表している。